私の仕事探し(連載第1回) あ~あ、全然ダメだ!

私が実際に仕事を見つけた先は、以下の6つです。

  1.コネ。

  2.自分で営業する。

  3.ニフティの在宅ワーキングフォーラムの会議室にPRを書き込む。

  4.入力会社に登録する。

  5.メルマガを出す。

  6.ウェブサイトを作る。

 私がどうやって仕事を探したか、時期を追って見てみましょう。

仕事以前――ワープロ専用機に悪戦苦闘の数年間

“日本語ワードプロセッサ”という機械が登場したのは、私が高校生の頃、今から20年近く前のことでした。その頃は、机くらいの大きさがあり、値段はなんと200万円!ほどもしたのです。それからどんどん性能が良くなり、形は小さくなり、値段は下がりました。

  20代のころは、他人のワープロを借りてアマチュア劇団のパンフレットを作ったりしていました。今思うと一本指打法に近いもので、レイアウトの知識もなく、数ページ作るのに何日もかかっていました。

  20代後半の頃、勤めていた工場で「彼女はワープロが打てるらしい」ということになり、ときどき工場事務室へ書類を作りに行くようになりました。ここで初めて、事務室の人に表のレイアウト方法やタブの使い方などを教わったのです。使っていたのは書院の高級機でした。

  ところが、私が結婚前に初めて買った自分のワープロはオアシスでした。一度もさわったことがないのに、なぜ買う気になったかというと、ポータブルタイプのワープロでは、モデム内蔵のものが当時それしかなかったからです。私はパソコン通信がしたかったのです。当時はインターネットブームのはるか昔ですが、私はすでにワープロ・パソコンをコミュニケーションの道具になりうるものと捉えていました。

400字が打てずに涙……

 1993年に結婚しました。やがて退社しました。妊娠しました。専業主婦の生活は、私にはまったく向いていませんでした。退屈なのですが、だからといって凝った料理を作るタイプではないのです。何か勉強することにしました。校正の通信講座を受けました。日商ワープロ検定を目指して、問題集を買ってきました。

  校正の通信講座はとおりいっぺんの内容でしたが、ワープロ検定の勉強には手こずりました。なんと、10分間にわずか400字という試験問題が打てないのです。ましてレイアウトする問題は箸にも棒にもかかりませんでした。

  とにかく10分間に400字をクリアするべく、必死に練習しました。手元を見ずに打てるようになり、じき、10分間に800字ぐらい打てるようになりました。

  好きなことは努力できるもので、短期間にスピードが倍以上になった私は、向いているのでしょう。やってもうまくならないとか、じき嫌になって努力できないものは、しょせん向いていないのかもしれません(私の料理のように。英会話のように。その他もろもろのように)。妊娠7カ月ぐらいのときワープロ検定3級を受け、無事合格しました。

商店街の仕事でエクセル初挑戦

 義父が商店街の会計係になり、親睦旅行の会計報告を作成することになりました。前任者は息子さんにワープロ打ちをしてもらっていたとかで、「こんなの読めればいいんだから、手書きでいいんだけど」と義父は言いながら、やっぱり“打ったもの”にしたいようでした。

  私は大喜びでやらせてもらいました。最初はオアシスを使い、パソコンを買って(1996年)からは、エクセルを使うようになりました。最初は結婚してまもなくだったので、義父は遠慮していくらだったかお金をくれました。

  その後現在に至るまで、年間会計報告、新年会出席者名簿、新年会の会計報告、忘年会のテーブルに置く名札、といろいろ頼まれて作成しています。まさに読めればいいという感じで、あまり表の形式やレイアウトにうるさいことは言われないので、楽な仕事です。最初の一回以外お金はもらっていませんが、おかげで『入力の経験者』と名乗れるのですから、こちらからお金を払ってでもやりたいところです。

作家とお友達

 コネで本当の仕事をしている人といえば、友人が作家(だったかな)という人の話を聞いたことがあります。毎日、新規の入力と過去分の直しがファックスで入ってくるので、家でワープロを打っているのだそうです。うらやましい仕事です。大学教授のおじさんか何かいる方は、ぜひ論文書きの清書をやらせてもらいましょう。

  でも一番強力なコネは、以前勤めていた会社や取引先から仕事をもらうことではないでしょうか。デザイン関係で独立する人は、たいていこういう形で仕事を確保しながら新規のクライアントを開拓していくようです。

たわいないDMだったけど

 コネがない。それなら自分で営業するしかありません。当時の私が参考にしたのは、ニフティの在宅ワーキングフォーラム(FWORK)でした。『りびさんの営業指南』という、とてもおもしろくてためになる読み物(?)が、フォーラムのデータライブラリに入っています。私もかつて、これを読んで営業をしてみたのです。

  FWORKの会議室では、在宅で仕事をする人の意見・情報が飛び交っていていました。現在はインターネットの普及でいろいろなサイトが出現したため、かつてほどのにぎわいではありません。それでもやはり立派なフォーラムではあります。

  赤ん坊が1才になったので、仕事をしたくなったのですが、保育園は年度途中で空きなし。子どもが小さいうちは在宅で仕事ができればと思うのはみな同じです。とにかく自分で営業することだ、まずダイレクトメールを出すことからやってみたらいい、ということのようなので、自己流で作ってみました。

  オアシスで一枚作ってコピーし、封筒には手書きで宛名を書きました。今思えばほほえましいやり方です。送り先は電話帳で探しました。近くの印刷屋さんが主だったと思います。特に『自費出版』という字があるところに送りました。ベタ入力があるのではないかと思ったからです。学校・幼稚園・公民館など人が集まって、講演会をしたりナントカだよりを作ったりしそうな所にも出しましたが、こちらは全滅でした。印刷屋さんの方も、何の反響もありませんでした。

テープ起こしProjectに手を挙げる

 その頃…1995年12月下旬、FWORKの会議室の一つで、あとから【テープ起こしProject】と呼ばれる一連のやりとりが始まりました。関西のある団体で、『フリーランスのための法律講座』という講演会があり、そのテープを素起こしし、リライトし、フォーラムのデータライブラリに載せよう、そのための人員を募りたい、というものでした。

  フォーラムではテープ起こしをやっている人、やってみたい人、そのための機材、仕事の単価などの話題が出ているときだったので、この仕事の経過を会議室に書き込んでみんなに読んでもらいながら進めよう、という一石二鳥のプロジェクトでした。

  人を募る、という最初の書き込みを読んで、私はただちに「素起こしをやらせてください」というコメントを書いてアップしました。

  こういうとき、「やりたいな。でもできるかな。どうしようかな。一応夫にも相談してから」などと悠長にやってると、参加するタイミングを逃してしまいます。このときも、「テープ起こしに興味がある」人、「何でもいいから仕事をしてみたいけどコネもきっかけもない」人がおおぜいROMしていたはずですが、手を挙げたのはほんの数人でした。私がこのプロジェクトをきっかけに、作ったDMを批評してもらう人ができたり、テープ起こしの仕事をもらったりしたことを考えれば、やっぱり引っ込み思案は損です。

  人員を募る最初の書き込みには、「フォーラムから謝礼を出す」という文章があったにもかかわらず、そこは読み飛ばしたらしく、私は仕事が終わるまでずっと、無償のいわばボランティアだと思っていたのです。それでもやりたかったのは、もちろん『未経験者不可』という例の壁をくずそうと思ったからです。第一、仕事を出してくれるところがあったとしても、いったい自分はお金をもらえるレベルなのだろうかという不安もありました。フォーラムでの仕事ならアドバイスももらえるし、本当の仕事より気楽に取り組めるかもしれないとも思いました。

快挙!テープ起こしがおもしろいと実感できた!

 けれど参加できることになって、また大騒ぎでした。オアシスフロッピーのフォーマットのバイト数を聞かれてもわからない、フロッピー渡しはやめて、出来たデータを通信で送る、ということになり、今度は送り方がわからない。圧縮・解凍という言葉さえ知らないのだから、もちろんできるはずがない…自分がお荷物になっていくようで、とてもあせりました。トランスクライバーという、テープ起こしの機材を貸してあげましょう、とフォーラムのメンバーの一人が書き込みしてくださったので、すぐ「お願いします」というコメントをアップしました。

  ただし、テープ起こしの仕事そのものはわりとスムーズでした。テープが手元に届くまで、内容に関連がある本を図書館で借りて読んでいましたから、法律用語、商業用語も聞き取れました。リライト(素起こしの文章から、実際に提供されるスペースに合わせて刈り込んだり、編集したりする人)を担当した方にもおほめの言葉をいただいたので励みになりました。

FWORKに売り込みをアップ…たった一つの「実績」だけど

 これで一応の『実績』『経験』ができたので、FWORKの20番会議室(売り込み大作戦)に「仕事をください」をアップしました。ここは仕事がしたい人が自己PRを書く部屋です。人をつのりたい会社あるいは個人が、仕事を打診するメールをくれるので、条件が合えば仕事がもらえるというわけです。この会議室独特のルールがたくさんあるので、PRをアップしたい人は説明をよく読んで慎重に正確に書かなければなりません。ルール違反のPRは削除されてしまいます。

  これは現在多くあるウェブサイト上の求職掲示板も同様ですが、PRをアップしたあとは、毎日メールチェックしなければなりません。なぜかというと、あなたのPRを見て「この仕事をしてもらえませんか」というメールをくれる人あるいは企業があるからです。そのとき返信が遅くなれば当然あなたのイメージは下がります。

  特に「この人に頼みたい」という強い希望がなければ、PRの見出しまたは本文から『入力』とかいうキーワードで検索して、該当する人全員に同じメールを送っているようなので、1日遅れただけで締め切りという場合もあるでしょう。

  当時はまだ、インターネット上にたくさんの「仕事ください掲示板」のある時代ではありませんでした。(多少はあったかもしれませんが、私のほうにインターネット環境がありませんでした。)

 

 

『月刊在宅入力者』創刊号(2000年11月)

 

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