廿 卓也ママさんはわりと地元密着ですね。
卓也ママ すごく地元密着。静岡県に数人メンバーがいるけど、私はそっちに姉がいるから彼女たちにも毎年会ってるし、それ以外はほぼ100パーセント地元の方ですね。自分がこういう仕事をしているといつも言っているから、「○○ちゃんのママがMOTを受けたらしいよ」とかいう情報が入ってくる。
その方をスカウトしたら、「私なんかとても…」って言ってたけど、優秀なインストラクターさんになってくれました。今は市役所のパートに出てしまったんだけど、市のホームページの更新を担当してます。
廿 活躍してる。そうならなくちゃねって感じ。
卓也ママ そう、みんな出世しちゃうの。私、そういう人を結構見つける。自慢にはならないけど、地元民をスカウトする力はすごいよ(笑)。
廿 それは自慢になりますよ! 私、ザイニュー以来ずいぶんいろんな人に話を聞いてきたけど、そういう形態でうまくいってるケースを聞いたのは初めてです。地元志向で始めても、地元としてはふくらみきれずに、結局九州のグループに北海道の人が入ってたり、その逆とかが普通みたいですよ。
そうなると、PTAの役員もパワーになるわけですね。人脈が広がるって意味では。
卓也ママ PTAはいいですよー。ただし、やるなら中途半端な位置はダメですね。バザー委員長とかになって、自分のやりたいように、自分の仕事のスケジュールに合わせて日程を決めちゃうほうが、かえって楽。
廿 「PTAの顔」って人、どの学校の保護者の中にも自然にできてきますよね。
卓也ママ うん。私、自分がこういうタイプだとは全然知らなかったんですよ。前はもっと地味だった。自分がこんなにしゃべるタイプで、人前で講演したりするとは思わなかったの。変わったのは子供産んでからですね。
廿 子供を産むと…なんで?
卓也ママ コミュニケーションしなきゃいけない人が増えたから。子連れで公園に行って、不特定多数の人とあたりさわりのない会話をしなきゃいけないでしょう。そういうコミュニケーション能力は、私は主婦というものになって磨かれた。
廿 主婦になって磨かれたというのは面白いですね。
卓也ママ 一度会社やめて家庭に入ると楽しいよ、と(笑)。いろんな人に会えるしね。自治会も子供会も役員をやったし、民生委員やりませんかって話まで来ちゃって。さすがにそれはお断りしました。
卓也ママ 仕事って、自分がやるのが一番早いし確実なんだけど、それじゃ追いつかないというか、体力がもたないから(笑)、誰かに託さないと。早く隠居して、普段は何もしないで、何かあったとき呼ばれるようなのがいいなあ。
廿 でもそうするには、とりまとめる人が必要なわけですよね。それって難しくないですか? 作業者は育てられるけど、まとめられる人は…。
卓也ママ なかなか育たないね、まとめる人。でも結構私のまわりでは育ったかな。お手伝いしてくれた方は、今ではみんな自分で仕事を取ってきて、下にまた5人ぐらいメンバーがついたりしてます。今度はその人から仕事をいただいたり、なんていい世界だ!と自分でも思う。本当にいい人ばっかり揃ってたわ。
廿 人をとりまとめるスキルって、対面で教えなきゃいけないでしょう。呼びつけて時間を拘束するなら時間給を払ってほしいって要求されることが、よくあるみたい。卓也ママさんは地元密着だからそこをクリアできたわけですね。
卓也ママ うちのメンバーではいなかったけど、そういう人っているらしいね。募集して応募してきた人だと、そうなっちゃうんじゃないかな。だって当然、お金をもらえるから仕事をしましょうっていう関係なわけでしょう。私は、仕事のメンバーの前に、まずお友だちだもん。
今は、まとめる人よりむしろ、技を引き継げる人が誰かいないかなと思ってるの。
廿 卓也ママさんなみにできる人なんて、めったにいないですよー。
卓也ママ ピボットテーブルとかが好きな人。でも、ただエクセルでピボットがかけられればいいっていうことではなくて…。
廿 つまりそこへ行くまでの設計というか、そこにそれが必要だと判断する能力と経験が必要なわけでしょう? どれを縦に、どれを横に取れば、いい結論が出るか。マニュアルに手順が(1)、(2)…って書いてあればピボットテーブル作成自体は誰でもできるけど、その手前の設計からできる人ってそんなにいないですよね。
卓也ママ 私、会社員時代に解析的な仕事をしてたんですが、「このデータはこのグラフにして何の意味があるんですか」「このデータは本当にあなたが証明しようとしている事象を表わすデータなんですか」って追及されながら鍛えられた。
何パーセントの信頼性があるとか検証してデータを使うものなんですけど、「ちゃんと検証しましたか」って突っ込まれて、また大学の統計学の教科書引っ張り出したり、高校の数Iの教科書も常にそばに置いてた。
高校と大学で教わったことって、こんなに役に立つんだ!って意外でしたね。
卓也ママ (ここらへんは情報処理の話。むずかしいので省略)それで流体解析では…、×××ってやりましたね、数IIか数IIIで。
×××は数式で…。仕事で請け負ったテープ起こしなら、泣き泣き何度も聞き直したり調べたりするんだけど、今回はいいや(笑)。卓也ママさんによると、「微分で dx/dy = で…」というようなことを言ってたはず、とのこと。
廿 やったはずです、たぶん。私は文系だけど、うちの高校は当時、文系でも数IIIまで必修だったんです。私の翌年から、文系は数Iだけでよくなった。
卓也ママ 私たちの2年下になると、数学の教科書が「代数」「幾何」とかに変わったじゃない? 数IIIとか言っても通じないよね。
廿 うん。文系なのに数IIIまでやらされて、私には全く無意味な時間だった。何もわかんなかった、数Iもわかんなかったんだから。でも、高校の数学って、人によっては社会に出てからかなり役に立ってるんですよね。
卓也ママ この前、上の子の中学で授業参観だったんですよ。授業を見てると、「こんなの使わないと思ってるかもしれないけど、あんた将来使うかもしれないんだよ」って子供に言いたくなりますね。その授業は歴史で、承久の乱のところだった。はい、承久の乱とは?
廿 ナントカ上皇でしょ、ああ、後鳥羽上皇だ。
卓也ママ よく覚えてる!
廿 私、自分の子供には、「あんたは私と同じく理数系で生きていくのは無理だから、社会科は端から端まで覚えなさい」って言ってます。
卓也ママ 子供の勉強のことは頭が痛いというか、結構真剣に考えちゃいますよね。
廿 うん。結局は学校の勉強というのは役立つものだから。どこが役立つかはその人の職業によると思うけど…。ちゃんと身につけさせたいと思いますよね。
卓也ママ 私らが死んじゃったら、自分の力で生きていかなきゃいけないんだし。上の子はやっぱり大学までは行ってもらいたいし、勉強はそれなりにさせておきたい。下の子は生きる力はありそうだけど。
親は教育しか残せないよね。私たちの仕事だって、いつどうなるかわからないじゃない? 仕事先でデータ漏洩…なんかしないつもりだけど、何かの間違いで漏洩しちゃって損害賠償だなんて話になっちゃったらねえ。個人で怖いのはそこですよね。
廿 本当にそれは怖い、私もよくそう思います。
最近、同業者と会って盛り上がるのは個人情報保護法に関する話、それと子供の教育問題。赤ん坊を抱えて在宅ワークを始めた私たちが、子供の教育に頭を痛める世代になったってことでもあるんだけど。
食後のコーヒーも飲み尽くして、その2つの話題で盛り上がりながら、対談は終わり。
(卓也ママさんからメッセージをいただきました)
廿さんと初めてリアルでお会いしたのはいつかなあと家にある資料をかき分けていたらこんなのが出てきました。
これが6年前のこと。その後もいろんなセミナーでお顔をあわせる機会もたびたび。いやー、顔が広い! 守備範囲が広い!と思っておりました。
じっくりとお話したのは今回が最初でしたが、不思議とお互いのことは分かってしまうのがネットつながりのいいところ。同じ時期に出産・育児を経てきたこと、そして“在宅ワーク”を進めていくために、数限りない工夫と努力を重ねた同士だからでしょうか、話が全く途切れませんでした。軽く3時間くらい話しっぱなし。テープ起こすの大変でしたでしょう。すみませんね、おしゃべりさんで (*^ - ^*)ゞ
ポリポリ
今回「おまけ」文章や「写真」などもそのまま載せていただきありがとうございます。
在宅ワークに関しての資料と書籍類、今となっては情報が古くなって役に立たないものも多くなってしまいましたが、ブームの渦中にいた者として、当時の様子を伝える機会を作っていただいたことに感謝します。
本当ならお盆休みに入る前に、卓也ママさん・私それぞれの「対談を終えて」まで掲載してしまう予定だった。そうならなかったのは、私がまたまた今年も夏ばてしたせい。対談後の恒例にしたいと思っている、対談者をお招きしての交流会もちょっと延期、9月上旬か中旬を予定。いずれ告知を出しますので、どうぞよろしく。
ザイニューの対談シリーズは、5月は入力グループのリーダーという立場から畔見さん、6月がテープ起こしのメンバー的な立場から文月さんのお話を伺ったので、今回はぐっと視点を変えた話題を…と思っていた。
ちょうど卓也ママさんからメールをいただいたので、在宅ワークの歴史とか行政の動きなどを伺うならこの方!と思いついて、お願いしたら快く引き受けてくださって、感謝。
私が作った「在宅ワーク年表」もながめながら対談が進行した。「それが、このへん」「ああ、そんな流れでしたよね」というような会話だったのだけど、この年表は大ざっぱで、まだちょっと公開できるようなものではなくて…。いずれ内容を充実させて掲載したいと思っている。
対談当日から連載終了まで時間がかかっている間に、いろいろなことがあった。なので、明日から数日はその話題。
対談当日から連載終了まで時間がかかっている間に、いろいろなことがあった。
【いろいろなこと、その1】
例えば、7/23の記事に登場するいろいろなお名前は、記事内でなんとなく「在宅ワーカー系」と「社長さん系」に分類されている。その中の宮田志保さんが会社を設立して「社長さん系」に移動された。株式会社エフスタイルの代表取締役+NPO法人フラウネッツの理事長、ということになる。
宮田さんが会社設立中であることはご本人から伺っていたのだけど、対談時点では設立期日を知らなかったので、話題にしなかった。
余談ながら、こういう活動形態では、顔が2つ必要になることが多い。私も、企業に向けて「四月堂」、同業者に向けて「月刊在宅入力者」と、2つのWebサイトを持っている。名刺は2枚持ったり、1枚の表と裏を四月堂とザイニューにしたりしている。
今回の対談について紹介してくださったブログ記事(日付順)
(1) SOHO/在宅ワーカーのためのブログ ambitious SOHO! 7/23の記事
(2) さくさく堂のシナプスな存在 8/13の記事
(3) テープ起こし(録音反訳・音声反訳)、在宅ワークの現場から/ぺんぎんの濁流 8/16の記事
(4) テープ起こしを仕事にして 8/17の記事
皆様ありがとうございます。ブロガーさんたちをざっとご紹介。
(1)はフラウネッツ宮田さん。
(2)は、さくさく堂さんならではの分析とビミョーに鋭い突っ込み。「いや~、もっと会話は輻輳してんでしょ」ってねー、あはは。できるだけ会話のままと思いながらも、やっぱり多少は前後の話題を入れ替えたり、整えたり削除したりはしております。
(3)は、(2)のさくさく堂さんブログと私のブログ両方を受けての記事。大阪在住の日本ぺんぎんさん(+所長さん)とは、せっかくお会いする機会があったのに、そのときWeb版ザイニューの決心がついてなくて、取材できなかったのが残念!
(4)のフルセイルさんとは、フルセイルさんの記事にあるセミナーでお会いして以来、テープ起こしをお願いしていた時期もあれば、自主制作本の作業部会に来ていただいた時期もあり、長年お世話になっています。