卓也ママさん3

会社時代の経験が生きている

卓也ママ 会社時代、大手町にあるシンクタンクに2カ月ぐらい出向で通わせてもらったことがあるんです。そこでは仕事(画像解析関連)の勉強をさせてもらって、なおかつトップクラスのシンクタンクの人たちの働きぶりとか、仕事の仕方なんかを見て、「すごい、うちの会社と全然レベルが違う!」。入り直せるものならとも思ったけど、「修士の人じゃないとだめ」って言われて断念したの。
私は大学院がない大学に行ったせいもあって、会社に入るまで修士という言葉を聞いたことがなかったんですよ。マスターって何? ドクターってお医者さんのことじゃないの?って。

 

廿 私も、修士や博士を取るのって大学に残って学者になる人なんだと、以前は思ってた。

 

卓也ママ ところが、いざ実際自分が仕事をしてみると、東大や京大のマスターやドクターを取った人たちがぞろそろいるわけですよ。人工衛星解析に関しては私のほうがわかってるから「こうやってください」と言うと、「じゃあパラメータをこういうふうに計算しましょうか」と、彼らが専門的に考えてくれる。仕事は面白かったから続けたかったけど、でもまあ、やめたらやめたでね(笑)。

 

廿 そういう仕事に比べちゃうと、代わりの仕事はどれもこれもやりがいがないですね。

 

卓也ママ ううん、そんなことはない。それに、会社時代の経験が生きてますから。ちょうど大型汎用機からパソコンへの移行期で、ワークステーションが会社に入ってまだ専門分野が定まっていない私が担当になったり、パソコンだネットワークだっていう段階になったころまでいたんです。

 

廿 そういう時代的な変遷をだーっと経験してきたっていうのは、うらやましいですね。

 

卓也ママ パソコンの変遷は全部わかる。わかったからってどうってことはないけど、得はしてるかもしれないですね。なんでコンピュータがこういう手順で動くかとか、なんでメモリが足りないとプログラムが動かないのかとか、いろいろなのを扱ったので、そういう基本的なことが見えているんです。

 

廿 私はそういうバックボーンがないから、本当に困るんですよ。入力をやってればいいだけだから困る必要ないんだけど、自分では困ってます。

 

卓也ママ うん、入力には全然必要ないんですけどね。私は入力よりデータの整理とかとりまとめが最近多いので、例えば十万件のデータをきちんと整理するにはどうしたらいいか、手で全部直すのは無理だからマクロを組んだり関数を組んだり、ちょっとしたC言語のプログラムを書いて処理したり。そういう対応ができるから重宝がられてるんだろうなと思うんです。

 

体力より調整力で勝負する世代

廿 この仕事で長くやっていこうと思えば、何か専門分野(あるいは2本目の柱)を持つ必要があると思うんですよ。入力ができてデザインができるとか、入力ができてプログラミング系ができるとか。入力一筋にやるっていうのは、ものすごく体力勝負になる。

 

卓也ママ そう、もう年齢的に体力では勝負できないと思う。私は97年に下の子を産んで、背中におぶいながら入力とかしてたけど、今じゃとても無理。

 

廿 私も98年に下の子を産んでるから同じぐらいですよね。子供を寝かせてから自分は起きて、真夜中に仕事することもできたけど、今となっては…。

 

卓也ママ 集中力が全然上がらないんですよ。やるときはやるしスピードも出るんだけど、そこまでのアイドリングが長い(笑)。

 

廿 まあ、それが中年の働き方というか。だから普通の会社では、そのぐらいで管理職になるわけでしょう。走り回るほうはもう自分ではだめだから、脳みそで人を使う。ただ、私たちは管理職といっても部下がいない。

 

卓也ママ でも、調整能力はついたかな。「こういう仕事があるんだけど、誰か探してくださいよ」とか頼まれません?

 

廿 人を紹介したりとりまとめたりすること、ありますね。

 

卓也ママ 在宅ワークをしてる人には昭和39年生まれ、多いですよね。私と廿さんと、さくさく堂さんもそうだし。たんぽぽさんは40年?

 

廿 40年だけど早生まれだから学年は同じ。この世代のために在宅ワークはあるみたい(笑)。

 

卓也ママ それは思いますよ。均等法世代で、女性でも働け働けと言われて、そのくせ、子供ができたら家にいなきゃだめっていう呪縛があった時代。うちは長男が93年生まれなんだけど、「たまごクラブ」と「ひよこクラブ」ってその年の創刊なんですよ。私、買いました(笑)。世の中に公園デビューという言葉が登場した。

 

廿 うちは長女が94年生まれ。そういう時代でしたよね。

 

卓也ママ でも考えようによっては、出産でやめられたいい時期だったのかもしれない。若い世代はもっと状況が厳しいですよね。

 

・体力と集中力は個人差が大きくて、もっと年上でバリバリやってる人もいる。私はもともと体力がない。

・さくさく堂さん…在宅ワークにも派閥みたいなものがあるという話題が出た(7/23の記事)けど、彼女は派閥横断的に人脈が広い。ブログさくさく堂のシナプスな存在はオススメ。
・たんぽぽさん…谷頭千澄さん。SOHOWORKネットのオンライン講座でテープ起こしコースを担当していた。このテープ起こしコースがヒットして、笠松さんがほかのコースもやりたいねと言い出したとき、私を文字入力コースの講師に推薦してくれたのがたんぽぽさんだった。

 

手を広げるぐらいならパートに出るほうがまし?

廿 入力が好きな人は入力が好き、テープ起こしが好きな人はテープ起こしが好きなんですよ。そういう人に、プログラム系でもデザイン系でもライター系でもいいから、何か専門をもう一個持ったら?って言っても、本人が納得しない。

 

卓也ママ 私が頼んでるすごく入力の速い人も、やっぱりそういうタイプ。ライティングの手伝いもしてもらったことがあって、きちんとできるんだけど、無理をして手を広げるということはしないですね。いまのところ、入力だけで仕事は来るし、まわってるから。

 

廿 入力の好きな人は、ほかのことをやりたいという気持ちがあんまりないみたいなの。でも、たとえ仕事量が多くても、下請けで稼げるお金はどうしても限界がある。そうなると結局はパートに出ちゃうでしょう。

 

卓也ママ 子供の手が離れたら、絶対出るよね。つまり、おいしい仕事を知らないのかな。

 

食後のコーヒーとデザート、到着。

 

廿 多い月はそこそこ収入になるにしても、入力系はどうしても繁忙期と閑散期の差があってお金の入らない月がありますからね。

 

卓也ママ 2月3月は本当に忙しい。もっとばらけて来い!みたいな(笑)。

 

廿 年度末を乗り切れるかが一番キョーフですよね。大口のテープ起こしを打診されて、「春休みなので人手が確保できません」って断ったことがあります。
でもこの間、すごい技を教わった。エンドユーザーさんがお役所系で、どうしても年度内に予算を使わなきゃいけないって言われた人が、お金を先にもらって、仕事は4月になってからゆっくり納品したって。

 

卓也ママ あ、そういう場合もありますよね。向こうとしては年度内に領収証が欲しいから。ちゃんとやるだろうという信頼関係があれば大丈夫なんじゃないですか。

 

廿 そうか…。できないって断ったのはもったいなかったな。

 

お金を年度末にもらっておいて、仕事は年度明けからとりかかるような方法って、私が知らなかっただけで案外常識なのかもしれない。

 

それと同じように、デザインとかプログラミングなど敷居の高い仕事(←入力者にとって)以外に、入力系でもちょっとした技術で稼げること自体、知らない人は結構いるのかもしれない。
卓也ママさんの「おいしい仕事を知らないのかな」というのはそういう意味だと思う。ちょうどそこでコーヒーが運ばれてきて、会話の流れが一時中断しちゃったんだけど。
笠松ゆみさんも、セミナーではよく「入力は、仕事の大きな流れのほんの一部で、その先がこんなにあるんです、そこに目を向けましょう」と力説していた。

 

自分が楽しく、お客さんに喜ばれる仕事

卓也ママ たまに外へ出るのって、雑誌の吊り広告とかを電車の中で見られるのが楽しいですよね。

 

廿 それは思います。

 

卓也ママ もう子供もだいぶ大きくなったし、どこかお勤めしたほうが楽かもしれない。でも今の仕事形態をやめない理由って、いろんな時間にいろんな所に行ってみたいという欲求が人より強いせいもあるんです。
午前中に電車に乗るとおばちゃんばかりで、遅くまで仕事をして帰ってくるとオヤジばかりとか。神田駅の西口はオヤジしかいないのに、すぐ近くの小川町あたりは学生ばかりとか。いろんな時間にいろんな会社に行って仕事することで、そんな観察もできますから。

 

廿 外に出ること、多いですか?

 

卓也ママ 昔より少ないです。でも月に2回ぐらいは東京に来てる。
在宅の仕事じゃないんだけど、ある会社の顧客管理システムを手掛けてます。食品のWebサイトで、HTMLを誰かに頼んだり、プロモーションをしてもらったり。私自身がやるのは、サーバー選びとかメールの設定とか、アクセス解析をしてレポートを出したり。

 

そこの会社はもう7年ぐらいお付き合いしてます。FileMakerProができるというので紹介してもらったんです。最初は1年ぐらいかけて、まずシステムを作ったのかな。
企業が作ると何千万円もかかるけど、私なら桁が二つくらい違っても遜色ないものができて(笑)、そういうので重宝がられてる。でもそのへんのデータ入力よりはやっぱり単価もいいし、自分の技術も生かせるし、お客さんに喜ばれるから。

 

廿 じゃあ、正社員だったやりがいのある会社はやめたけれども、やっぱりやりがいのある仕事にはついてるってことですね。

 

卓也ママ うん。やっぱり楽しい仕事がしたいですよね。自分が楽しい仕事、そしてお客さんに喜ばれる仕事。
講演をテープ起こしして記事にまとめる仕事がたまにあるんだけど、これも好き。私は、講演当日にノートパソコン持ってって、会場で聞きながらほとんどまとめちゃうの。録音テープはもらわなくてもいい。自分の入力スピードが生かせるし、作業時間が短いから結果的にお金もいいし、早く納品できてお客さんにも喜ばれる。

 

きのう話題になった「おいしい仕事」の一つは、こういうものかもしれない。私も似たような形態の仕事がたまに来るけど、すぐできて簡単で面白い。全然違う分野に進出する抵抗感に比べたら、こういう「今の仕事に付加価値をつける」路線のほうが、入力者にはお勧めかも。

 

おまけコラム「おいしい仕事」(卓也ママ)

 

あのときなんで「おいしい仕事」っていったのかは思い出せないけど、一緒に食べたラムの味はまだ覚えてる、また行きましょうね。ウフフ。という話ではなくって、ペシ!

 

入力系の仕事はどうしても作業の末端の末端であり、しかも中間マージンが発生すればするほど、金額的には「ウッソー!!」と叫びたくなるような状況になりがちです。自分の懐を豊かにするためには、まず実際のクライアントと直接連絡のとれる立場になること。そのほうが、金額的なことよりも、自分が何の仕事をしてそれがいかに役にたっているかを知ることができるから。一つの作業が終わってもそれだけでなく、付随したさまざまを手伝う機会も増えるので、仕事が途切れる心配がなくなります。

 

それに、どうしても個人作業になりがち、家にこもりがちな在宅ワーカーに、カツをいれてもらえますもの。東京に仕事で打ち合わせとなったら、それなりに、服を選んだり、身づくろいに気をかけるようになります。
私のもっかの目標はいまあるスーツを着続けられるように、体型を維持することでしょうか(笑)。ああ、加齢による基礎代謝の低下に負けそうです。

 

コミュニケーションスキル

卓也ママ 私、会社時代もそのあとも、あんまり仕事の人間関係で苦労したことないんですよ。虐げられててもわかってないのかもしれないけど(笑)。ホント、まわりの方に恵まれて今に至る。

 

廿 仕事ができる人は「まわりの方に恵まれて」と言うそうです。そうでない人は、まわりの人に恵まれないから愚痴ばかりなのか、自分が愚痴ばかりだからまわりの人に恵まれないのか、わかんないけど。

 

卓也ママ 「それ言ったら仕事こないのは当然」っていう発言をする人、たしかにいますからね(笑)。
でも私は全体にまわりの人に恵まれてきたので、人が好き。ホームオフィスナビの掲示板も楽しかったし、自分のブログにコメントつくのもすごく楽しみ。
アクセス解析をつけておくと、このコメント書いてる人はどこからアクセスしてるか、どんな時間帯に来てるかとかからわかるから、その人にしかわからないような書き方をすると、100パーセント、レスが来る(笑)。そういうのは得意。

 

そうか、アクセス解析ってそういうふうに使うものなのか…。ブログにもともとついてる機能でさえ、前日のアクセス数しか見てない私。

 

卓也ママ でもそういうコミュニケーションスキルみたいなものって、個人レベルの仕事では役立つけど、たぶん会社レベルの仕事では役に立たないと思う。だって会社って、むしろ個人の判断で動いてはいけないじゃないですか。特にこれからJ-SOX法とかで、社内の情報管理が厳しくなりますからね。

 

廿 J-SOX法を導入する企業は大変そうですね。

 

卓也ママ 大変だと思う、あれは。
今も、仕事先にメールを送るときは、個人情報とかお金に関わる内容は暗号かけてやりとりしてます。でもその中でJ-SOXに一番ひっかかる会社は、グループウェアでメールを読んでるから、メール自体を暗号化して送るとはねちゃうの。

 

廿 あ、なるほど。

 

卓也ママ だから、添付ファイルに暗号をかけておいて、開けるときにパスワードを入れてもらうようにしてます。
最近、セキュリティー関係で相談を受けることがすごく多くなりました。「うちの会社は今こうなんだけど、何かセキュリティー的に問題はあるかな」って。でも、一番問題なのは社員のモラルですよ。社員にデータ持ち出されるのが、一番危ないもの。

 

廿 あはは。

 

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